傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった

小野美由紀著『傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』を読んだので、レビューです。

「メンヘラ」という文字からちょっとネガティブで尖った印象を受けて、でも気になって、読み始めた本です。

慶応義塾大学フランス文学専攻卒という高学歴を持つ著者が、大学を卒業して就職活動中にパニック障害になってから社会に出るまでの話。
過去に自傷行為をしていた著者が自傷をしなくなったきっかけ、親子の問題とそれに向き合ったときのこと、など。一見バラバラに見える問題が同じ流れの中にある。

読後感は清々しく、社会っていろんな面を含めて楽しい場所だと、未来が明るく感じられる作品でした。
順風満帆に人生を送っている人も、何かにつまずいている人も、何かしら得るものがある本だと思います。

私自身は勇気をもらいました。”『マオ・レゾルビータ』(ブラジルの言葉で『未解決人間』)”にならないように、しっかり問題と向き合っていく勇気。

“イライラしたり、悲しかったり、不安だったり、っている感情はね。実は、余ったエネルギーを消費しようとして生まれるものなんだよ。たとえば、鬱病になったり、リストカットをしたり。そういう人こそ身体を触ってみると、実はエネルギーが溢れている。本当はすごくタフな身体をもっている。”

“それが心の奥底からの本当の感情なら、必ず誰かが受け止めてくれる。それに、そうしてみて、思うんだ。自分の国で出さないように押されていた感情は、本当に我慢すべきものだったんだろうか?って”

“俺たちは常にきみが体調を崩していないか、寂しく思っていないか心配しているし、次の街に着けば、君がいるかどうか探すだろう。一緒に歩いていなくても、たとえ違う街に滞在していても、君はいつでも、a part of crewなんだよ。”

本文からの引用です。

デガティブな感情もポジティブな感情も、エネルギーが溢れているという面では同じ。そこに共感しなきゃ、とか受け止められるか?とか考え始めると、ネガティブな感情に対しては結果距離を置く方向になってしまうけど、そのまま溢れて流れ出しているそのままを、その人らしさとして認めるだけでいいじゃないか。
どうにかしてあげないととか、私は無力だから無理だ、とか思わなくてもいいのかも知れない。
人って離れていても思いを馳せることはあるし、その反対に、自分も同じように思ってくれてる人がいるって信じていい。って思えました。

最後に、自分へのメッセージも込めて。

相手を楽しませるために、10の話を100にして話したり、逆に関心も無いのに関心のあるようなリアクションを取ったり、楽しそうに振舞ったりして、自分を”盛って”しまったりという経験は、誰にでもあると思います。
こういう『舌が勝手につく嘘』は、誰しも身に覚えがあるものだし、ちょっと話を大きくしたり、尾ひれをつけたりするだけであれば、実害はないように感じます。しかし、これを放置しているとボディーブローのように、自分の心にダメージを蓄積してしまうんです。」

これは、名越康文という著者の『驚く力』からの引用文として記載されていました。

そう、本当に興味がある話題かどうか、そして相手のためにもしくは自分話題から落とされないように自分を”盛って”いないか。人の輪にいるとき、自分をちょっと離れた視点から見守ってみよう。その方が、たぶん、長い目で見て、良い関係になれるはず。

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