Kindle版の『火花』(又吉直樹著)を読んだのでそのレビューです。
文学小説としての良し悪しは分かりませんが、中盤からは話にスピード感が出て一気に最後まで読みました。
芸人である主人公徳永と先輩芸人である神谷。
徳永は神谷を笑いに真摯で天才であると尊敬し、師匠と仰いでいる。
泣いている赤ちゃんをあやすシーンで、神谷は自分の芸を披露し続けて徳永はいないいないばぁをする。
2人のあり様を示す印象的な場面。
神谷はたびたび一般的には受け入れられないことを言ったりしたりする。
そんな神谷につっこんだり寄り添ったりする徳永の姿。
自分はネタだと思って話しても聞いた相手は引くっていうことは日常生活でもあって、笑いながら話していても内容がヘビーだったり解決しなきゃいけないような放っておけない内容だったり。
でも笑いにしないとやりきれない、もしくは助けてっていうSOSのサイン。
そんなことが頭に浮かびました。本気で寄り添ってくれる人がいると救われる。
芸人というか芸能人は、先も見えないし努力が報われるという訳でもない。
そんな立場だからこそ描けた世界観。
情熱や人間味が溢れた小説でした。
私自信は、可能性を狭めないことを考えたり、逃げ道というか別の道も想定しながら生きています。
それに、生活も月々のお給料で安定している。
すべての選択肢を排して、舞台に立って笑いをとることだけに生きるとどんな風景が見えるんだろう。
その一部が小説を通して体験できると思います。
これからも続く芸人人生と共に、また小説も書き続けて欲しいです。